松翁 様

作家 池波正太郎の本にも紹介され、蕎麦好きの方なら知らない人はいない名店、東京都千代田区の神田猿楽町にある「手打ち蕎麦切 松翁」。こだわりの蕎麦はテレビや雑誌などメディアでもたびたび紹介されています。

蕎麦つゆに重要なだし汁の濃度の測定に、弊社の屈折計をご使用いただいております。

水道橋駅から白山通りを神保町方面へ歩き、路地に入った静かなところにあります。

今回は店主の小野寺松夫さんにお話を伺いました。

お店の開店はいつですか?

昭和56年11月です。31歳のときに独立しました。最初はここから場所は近いですが18席のほどのお店でした。17年目に今の場所に移転しました。

松翁というお店の名前は?

名前の松夫から、父がつけてくれました。

こだわりを教えてください。

食材にこだわっています。
まず、だしについては、化学調味料を使わないということです。独立する前に4年間神楽坂のお店で修行をしていましたが、そのときおいしいつゆの秘訣が化学調味料だったということを知って驚いたのです。確かに化学調味料を使うお店も増えていますが、自分の店では天然の素材にこだわっていきたいと思いました。
でも何もノウハウがなかったので大変苦労しました。一から勉強でした。本で調べていたら、だしを煮出していくと旨味がお湯とかつお節にいったりきたりすると書かれていました。「そうであるなら旨味が一番お湯に出たタイミングでだしをひきたい!」
そこで手持屈折計(当時はN1でした)を使ってだし汁の濃度を測りました。5-10分おきに2時間の変化を調べたところ、確かに濃度の変化が見られました。

だしがらの味を確認し、屈折計の数値とかつお節の旨味がなくなるタイミングを研究しました。それからかつお節の削り方で旨味の出る量が変わることも発見し、厚く削ったり、薄く削ったりして試しました。
これらの結果から、かつお節は毎日、使う直前に薄く削っています。基本は水に対して8%のかつお節を入れるというように重量で行なっていますが、かつお節自体の影響でだし汁の濃度は変わってきます。

8%という数値は一般的に見て高い数値なのでしょうか?
数値は企業秘密でしょうか?

一般より高いと思います。通常4~5%くらいでしょうか。数値はべつに秘密ではないですよ。同じ8%で作ったとしても、同じ味にはなりません。それぞれお店の味を作れば良いのです。

(測定値を記録しているノートをめくって確認してくださいました)

例えば、同じ量で作っても日によってだし汁の濃度が1.3%、1.4%、1.7% と値が異なっています。かつお節のとれた場所、時期、旨味、脂も変わってきます。かつお節自体に塩分があって影響がでることもあります。

かつお節の見分け方とかあるのでしょうか?

触ったり、硬さや叩いて音を聞いたりして見分けます。これも最初の頃はまったくわかりませんでした。かつお節の日本一の産地、九州の枕崎まで行って見てきました。
だしにはかつお節だけではなく、昆布も重要です。昆布でとっただし汁は数値が低いので屈折計で濃度は測らないですが・・。昆布は、開店当時はお金がなく、価格が安目の日高昆布でした。利尻昆布、そして今は北海道の天然昆布を使っています。

だし以外のこだわりも教えてください。

みりん、しょうゆ、砂糖なども調味料についても、化学調味料を一切使用していないメーカを選んでいます。やはりこれらも作っているところを実際に見に行ってきました。
それから天ぷらの食材もこだわっています。冷凍のえびを使って天ぷらにしていましたが、どうしても尻尾が黒くなってしまう。生のえびを使うときれいな赤色になるのです。生のえびを使いはじめたのですが、生だと仕入れが不安定な点と非常に高価になってしまいます。そこで店内に水槽を置きました。

それと蕎麦粉です。蕎麦粉を作っている茨城の農家から直接仕入れています。ここもたびたび見に行っています。
梅雨時を過ぎるとそばのつながりが悪くなりますし、粉にしてから時間が経つとつながりが悪くなります。ですから、店に製粉機を置いて毎日粉をひいています。粉にするのに約2時間、更にそれをふるうので、前日製粉して翌日、蕎麦にしています。

製粉機、そば打ちは、客席から見えるようにガラス張りになっていました。
日替わりで、さまざまな変わりそばも味わえるそうです。
妥協を許さない徹底したこだわり、蕎麦への想いが伝わってきました。手間と時間を惜しまず、ご自分の目と舌で確認しながら創り上げた「味」。ぜひ皆さんも味わってみてください。

小野寺様、長い時間、ご親切に対応いただき、本当にどうもありがとうございました。おいしいお蕎麦もごちそうさまでした。

これからも末永くご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。

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